よみがえる空 #3

よみがえる空 第3話「苦しい仕事」
1、2話までを見て感じたことはレスキュー物語を描く上で安易なアクションドラマにしたくはないという作り手の意識で、実際の現場にたずさわる人々や被災経験者への応援歌という意識も含まれているのではないかと思います。それゆえにドキュメント的に淡々と進む物語は快濶や高揚にとぼしく、”物語的な物語”を求める層にはきびしいかもしれません。
1話では新人ヘリコプター操縦士である主人公が小松救難隊に着任する様子が描かれるのみで小松基地の描写も実際に取材しているわりには観察者的な視点に乏しく、脚本は丹念かとは思いますが視聴者の惹きつけが上手くいっていません。おそらく狙った演出だとは思いますが観る側は手探り的に主題に向き合わねばならず、この後どういう展開が待っているかという期待よりもお話が機能していないというストレスの方が高くなってしまっています。
ここで常道的な演出をするとすればアバンで緊急出動する主人公の厳しい表情、風雨の中危険な状況だが果敢にヘリを操縦する様子は経験豊富なレスキュー隊員のそれであり大人の男の重厚な顔つきである→OP・CM明け後一転して幼い表情の主人公が小松駅に降り立つ様子、ここで視聴者は「ああ、この主人公がいろんな難関やドラマを通して一人前のレスキュー隊員になるのか」と物語を俯瞰します。一旦道筋が示されて心の中で得心しているのでその後状況が掴みにくかったり物語が寄り道をしたとしても受けるストレスは半減されます。
しかし今作でそういったお約束的な構成を嫌っているのは”作られた物語にしたくない”という作り手の一貫した意思で、先に情報をあれこれと提示すること、物語を俯瞰させることで「これは主人公の成長ドラマなんだ」「レスキュー隊員のアクションドラマなんだ」などの先入観を持たせたくなかったようにも思います。
それは1話の段階では明確に感じていなかったのですが、つまづきと不安を感じながら視聴した2話で、一転してスタッフの精力的な主題の提示をうけることになります。
時間が無くなったのでつづく。


ちなみに、よみがえる空パイロット版のタイトルは「レスキューエンジェル」。主人公が女性のコミックが原作らしいんですけど、主人公を男性にしたのは主題がぼやけるのを避ける、現場をなるべく歪めずに描くための変更でしょうか。
ノベライズは小川一水だよ!「老ヴォールの惑星」は近年の日本SF小説の中で必読の傑作ですよ。
http://www.rescue-w.jp/anime_goods_ogawa.html


よみがえる空 ――RESCUE WINGS
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