世界名作劇場FC「牧場の少女カトリ」:高野登インタビュー

世界名作劇場ファンクラブの傑作同人誌「FAN CLUB MAGAZINE 16 牧場の少女カトリ」(1985.8.11発行)から、高野登インタビューを抜粋。

キャラクターデザイン 高野登 インタビュー

☆1985.4.20(土)
荻窪 喫茶「バイアブランカ」にて
☆インタビュアー 已然形+ば、翼、マシュウM


高野登
高校卒業後、虫プロに入社。ムーミンの動画でデビュー。その後は日本アニメ、東映、OHプロを経て、現在スタジオTOTO*の代表である。名作ものではハイジ、フランダース(作画)、三千里(動画チェック)、アン(原画)、トム、フローネ、ルーシー(原画、作監)、アンネット(#1原画)、カトリではキャラクターデザインと作監を手懸け、多くの名作アニメファンの注目を浴びる。近作では子鹿物語綿の国星超人ロック風の谷のナウシカミーム(OP作画も)等の原画を担当。
(*現在は解散)


ACT.1 カトリ以前
―――まず、ご経歴からお伺いしたいのですが。

 僕も他の人達とおなじように小さいころから絵を描くのが好きだったんです。中学のときはずっと漫画を描いてましたね。当時たまたまね、漫画映画を観に行ったんですよ。それがあの「ホルスの大冒険」だったんです。で、これはなかなか面白い。じゃ、次もまた観てみるかって。次が「長靴をはいた猫」だったかな?それもすごく面白かったしね。その辺りからアニメーションて面白いなって思い始めたわけなんです。森やすじさんの絵がすきでね、自分でも真似して描いたりしてたんだけど。
 まあ、それやこれやでダラダラと高校生活が続いちゃって。高3のときね、東映動画に入ろうと思ってたんです。TVアニメは全然興味なくてね、東映はホルスとか長猫とか作ってるところだし、どうせやるんならああいうのやりたかったしね。でも当時東映は、人採ってなかったんですよ。1回行ったんですけどね、中にも入れさせてくれないという(笑)。
 それでがっくりきてたら、人から虫プロで試験があるよって言われまして、じゃ、しょうがない受けてみるかと。で、自分の描いた漫画とかを持ってって見てもらったんです。僕の場合家が埼玉だったんで、交通とかのこともあって何とか入れてもらえたんです。(編注:虫プロのスタジオは練馬の富士見台です)

―――当時描かれていた漫画がカトリのキャラの原型になったとか?

 いえ、全然違いますよ(笑)。絵は手塚治虫調でしたね。僕はムーミンやってたんだけど、合作の班にまわされたんです。合作すごく嫌いだったんですよ。ちょっとついていけないって感じで。その後手塚さんが社長下りて、虫プロすぐにつぶれちゃうんです。つぶれる前にやめたんですけどね。
 やめてからムーミンの動画を一人で外注としてやってたんです。そしたら森やすじさんが東映をやめて日本アニメーションの前身のズイヨー映像で仕事をやってるという話を聞きまして、じゃそこ行ってやってみようかと。それでズイヨーに入ったわけなんです。で、ロッキーチャックをやって、その後ですね、宮崎さんだとか、高畑さんとか、小田部さんが入ってきたのは。ホルスをやった人たちだっていうのは知ってましたけど、でもどういう人達か全然知らなかったんです。そしたら今テレコムにいる富沢信雄さんが盛んに言うわけなんですよ。こうこうこういうスゴイ人達だって。で、ああそうですかって最初は聞いてたんです。僕はやらなかったんだけど、ハイジの1話を見たら今までのものからするとやっぱりスゴイ信じがたい出来でしたね。
 それでズルズルと……どこまでやったかな、三千里の途中までやったんです。その後日アをやめまして、ま、ブラブラとしてたんです。もうアニメーターとして食っていけないと思ったんですね。うまくはならなかったし、もう駄目なんじゃないかってね。他の人はもう皆原画マンになっていたし、そういう、ちょっとこう、青春の葛藤がありまして(笑)。で、ポンとアニメーターやめちゃったんです。
 それで時計の枠を磨く工場に入ったんです。ギーッてね、こう、やすりで磨くんですよ。それを半年ぐらいやって。でもあんまり面白くないんですよね。それにお金にもならなかったし……だからどっぷりと暗い青春でしたよ。最高に落ち込んでましたねえ。
 その頃、三千里をやっていた関係から、アニドウ(編注:東京アニメーション同好会の略。外国アニメの上映会の主催。同人誌「フィルム1/24」の発行等、大規模なアニメ同人団体。コナンの黒本、ふくやまジックブックで有名)の並木孝さんと知り合いまして、彼に東映の「白鳥の王子」をやってみないかって言われて。じゃそっちのほうがお金になるかなと思って、またアニメーターに復帰したんです。「白鳥の王子」はずっと動画をやりまして、その後「キャンディキャンディ」をやることになったんです。僕はあの東映の絵のタッチで、しかも少女ものだしどうもやる気しないなあと思いつつもやったんですよ。で、まぁ、どっかの会社入ってやったほうがいいかと思いまして、どうせやるんなら原画を描きたかったし。それで旧アサヒフィルムというコクピットという会社の前身なんですけど、そこを紹介してもらったんです。じゃさっそく原画やってもらおうということになって、ドッと仕事が来ましたね。で、何て言うかそれほど厳しくないんですよ。日アと比べて。そこがいい所でもあり、悪い所でもあるんですけど。一年ぐらい経つと、まあ原画マンとしてやっていけるようになって、なんとか食っていけるかなって感じになってきたんです。
 小田部さんがその頃日アをやめて、「龍の子太郎」をやるということで東映に来たんです。で、一応顔覚えててくれたもんで君やらないかと言われまして、じゃそれやりましょうと。そういうわけで太郎もやったんです。
 そして太郎の打ち上げの時、OHプロの人が来ていて、君何やってるのと聞かれて、これこれこういうものをやってますよと。じゃ、うち来てやらないかって。それにはちゃんとウラがありまして(笑)。OHプロは当時「赤毛のアン」をやってたんですけど友永和秀さんがアンをやめたがっていたんです。一人欠員が出るとまずいというわけで、誰か描ける人を連れて来なければならないと。で、たまたまその打ち上げの時「あ、この人がいいんじゃないか」というわけだったんです。OHプロは有名ですし、優れた人もたくさんいますし、どうせやるんならそこでやってもいいんじゃないかと。それでOHプロに入ったんですよ。

―――じゃいきなりアンをやられたんですか

 そうですね。その頃東映の仕事も持ってたんですけどね。15話辺りから入ったんです。
 それからずっとアンをやって、トムをやって、フローネ、ルーシー。で、ルーシーの途中までやったんです。その後OHプロをやめまして、今の会社(スタジオTOTO)を作ったんです。

―――「綿の国星」や「ナウシカ」などは

 会社を作ってからやったものですね。会社をやってるといろんなものをやらなくちゃならないんです。ナウシカもやる予定なかったんですけど。会社が出来たばかりでね、あまり名前のある作品やってなかったんです。「ときめきトゥナイト」っていうの最初やったんですけど何か今ひとつ会社が盛り上がらないんでね。ここらで一つデカイ仕事をやろうと。当時僕しか描ける人いなかったから、なんとか社内に活気を入れようと思ってやったんですよ。その仕事がかなり早く決まって。その後ですね。「カトリ」の仕事が決まったのは。
 当時「子鹿物語」をやってたんですけど、それが終わっちゃうんですよ。(編注:子鹿の作画は83年中に全て終了している。つまり、初放映日には全てのフィルムが完成していたのである。)で、次の仕事を探して……とりあえず次の名作ものでもやろうかと。会社の人を原画マンにしようとも思ってたんです。それで日アに行って、まずプロデューサーの松土隆二さんと話をしたんです。そしたら今度こういうの作るからキャラ表描いてみないかって言われて。ま、キャラはどうせ誰かに決まるだろうと思って、あんまり断っちゃうのもマズイですし、じゃちょっと描いてみますかって気楽に描いてみたんです。
 で、それがまあキャラのオーディションになったわけですね。結局それに決まってしまって。ナウシカをかかえてたから本当はマズイんですけど。トップクラフトに宮崎さんがいて、できたらこっちに入ってやってくれないかって言われたんですけど、会社もあるしカトリもあるしってことで。ナウシカもちょっとお手伝いとはいえ、仕事として軽いとは言えないんですよね。ナウシカやりながら……いや逆だ、カトリの1話やりながらナウシカやっていたという。だからナウシカはあまり手が入ってないんですよ(笑)。


ACT.2 牧場の少女カトリ
―――カトリの場合オーディションでキャラが決まったわけですが、こういうケースはあまりないと思うのですが。

 ないですね、向こうも誰にするか迷ってたみたいだし。

―――決まったのはいつ頃なんですか。

 8月の末ですね。僕は外注だし、会社も一人でやってるし、だから決まるとは思ってなかったですね。誰かまた関(修一)さんあたりに頼むんじゃないのって感じで。まあ、こっちも関さんのキャラなら描き易いからいいやって(笑)。子鹿やってたからね。

―――カトリのキャラクターデザインにあたって留意された点は。

 僕はあまりリアルなものは好きじゃないもんですから、漫画っぽいの描きたいなあと思って。とにかく初めてでしたからね。キャラデザインて。線はもう極端に少なくして、服もあまり複雑にならないように、なるべく色が塗り易いようにとか、つまんないことですけどね。何とかこう能率的にいくようにと。
 やっぱりね、そんなに複雑にしなくてもいいんじゃないかって思ってましたから。ハイジの頃なんかすごい単純なんですよね。まあ、あのくらいでいいんじゃないかと、あとはもうお話が面白ければ充分見せられると。あのシリーズは毎年すごく苦労して作ってましたから、そういうのもあって、少しでも楽になるように……でもなかなかうまくはいかないんですけどね。

―――では苦労された点は。

カトリの場合あまりイメージをもってなかったんです。シナリオ読んでもわからないし、原作読むとさらにわからなくなるという(笑)。とにかくイメージがよくわからなかったというのはねえ。メインキャラはある程度個性的じゃないといけないし、なんとかイメージを固めようと思ったんですけど……つかみにくいんですよね。
 マルティなんか随分変わってますよ。僕は最初描いてて、すごくカッコイイ少年だと思ってたんですよ。作るほうの心理として小さい女の子が主体になって見るだろうと思ってるからね、この辺でちょっとカッコイイのをだそうと。そういう意図があったんですよ。で、キャラクター創ってOKになって、その後3話のシナリオ読んだんです。そしたら全然違うんですよね、イメージが。だからもう焦って変えたんですよ(笑)。

―――ペッカもだいぶ変わってますね。

 うーん、本当はかなり年上という設定だったんですよ。ほとんど同年代という感じになっちゃいましたが。まあ、あまり年が離れているというのもね。割と三角関係なんて生々しいですから。だからああいうこと(変更)になったんだろうと思うけど。
 とにかく最初の頃はかなり苦しみましたね。もっとアクの強いキャラも出したかったんですけど。とんいかくイメージがはっきりしていなかったから。意地悪だとか人がいいとか、その程度しか注文もこなかったんです。だから無難なところになっちゃうんですよね。やっぱりね、描きたくないキャラってあるんですよ。そういうの要求されるとどうしても嫌になっちゃいますしね。
 また原作ははっきり言って使えませんから、ストーリーはほとんど宮崎晃さんのオリジナルなんです。そういう意味でも困りましたね。全体を把握することができませんでしたから。だからすごくキャラクターのバランスが悪いと。最初っからこういう人が出るとわかっていればそういう風にちゃんとおさえておけるんだけど全くわからなかったし、後から後からこういう人がいるんだけどって感じで出てくるから困ったなあって。だから似たようなキャラが出てきちゃったりして。あまり描きわけができなかったという。いけないんですけどね。全ての作品に言えることなんですけど、やっぱりキャラクターの魅力って大きいですからね。だから一番大事なキャラクターのイメージを作るってことにズルズルとしていたというのは。1クールぐらいやってある程度何とかなったんですけどね。

―――カトリは舞台が変わるたびにキャラクターが増えますね。

 あのぐらい一辺にドッとキャラが増えるとやっぱり泣けますよ。3回も屋敷が変わってますからね。結局300枚近くキャラクター描いたんです。普通そんなに無いんですよ。最初の約束ではね、まあ200枚ぐらいだと(笑)。200枚でも多いんですけどね。
 普通1話に関してだいたい1枚か2枚程度なんですけど、カトリはそうじゃないんですよ。1話に10枚以上キャラクター描くときなんかホント嫌になってきますね。で、ただこう描けばいいっていうんじゃなくて、当時の服装や何かも調べなきゃならないんです。一応資料があってね、スッゴクデッカイ本が。それをめくるだけでもかなり時間がかかるんです。だから大変な仕事量なんですよ。

―――佐藤好春さんと森友典子さんの作画については。

 いや二人共スゴイうまいと思いましたね。スゴイ量直してましたからね。僕はそんな直せなかったから。あそこまでちょっとできないですね。(編注:ちなみに佐藤さんや森友さんは毎回原画完全修正。レイアウトはおろか、動画まで直してしまうという……お、恐ろしや)時間が空いたとしてもキャラクター創らないといけませんし、会社の人達にも教えなければならないし、経営上の雑用もたくさんありましたしね。

―――カトリの中で気に入ってるキャラは

 ほとんど気に入ってないんですよね(笑)。描いてしまってからいつも後悔しているという。

―――クラウス坊ちゃんがかわいいと女の子に人気があるんですが。

 フローネに出てきたジャックみたいって言われたんだけど(笑)。(編注:声は同じ高坂真琴さん)クラウスは描き易かったですね。割りとすんなりデザインできたし。

―――あとツルの恩返し少女(管理人注:22話のグニンラばあさんの昔話に出てくる少女。当時アニメージュの記事にも紹介され、カトリファンの間で高い人気を得た)なんかも人気がありますね。

 あ、あれか、あれもスッたもんだでして(笑)。全てスッたもんだしてるんですが。あれは出来が最低だと思ってたんですよ。ホントに最低の出来で、もう頭が痛くなって。でも人に聞いたら結構評判がよかったと言われて安心しましたけれど。

―――何か高野さんのキャラは顔が長い人が多いような気がするんですが。

 言われますね。何でこんなに長いんだって(笑)。女性をデザインすると顔が長くなるという。細身の人が好きなんですよ。痩せてるっていうか。ロッタはよく言われましたね。僕のはそんなに長くはないんだけど、佐藤さんが描いたの見ると長いんですよ(笑)。他の人はどう思ってるかなって。僕はあれでいいなって思ってるんですけど(笑)。

―――高野さんが作画した中で特に印象的なシーンとか話とかは。

 いやそういうのはあまりないんですよ。仕事がくるともうそれこそね……順調に仕事がくればいいんですが、そうはいかないんですよ。おしまいにドッとくるんですよ。おしまいの1週間とかに。そうなるともう、この話はどうのこうのと言ってる場合じゃないんです。とにかくもうやっていく(修正)しかないんですよ。こだわってると動画の手が空いちゃうと。僕自体が下請けの会社だから動画の人とかの手を空けちゃうとマズイんですよ。なるべくコンスタントに仕事をまわそうと思うんだけど。だからどうしてもかなり無理をしてやらなければならないんです。全く考えてる余裕がないんですよね。

―――カトリは打ち切りの話がありましたが。

 やっぱりびっくりしましたね。もうずっと低迷してましたから。その前(アンネット)も視聴率悪くて、また今回も悪いと。同じ頃やってた子鹿も10%いかないんですよ。あれだけ手間暇かけて作ったのに。カトリの場合、名もない原作ですけど、子鹿はあれ程のネームバリューがあってあの視聴率。で、名作ものはもうダメなのかなって感じで。
 僕もね、打ち切りはやむを得ないんじゃないかと思ったりして。お話もダラダラしてきたし、作品自体のイメージもそんなにキッチリしたものもないし。これもいい薬なんじゃないかと。打ち切りでどうするのかと思いましたけどね。急遽お母さんに会わせるのかなって(笑)。でも今から考えると続くことになってよかったと思ってますよ。おしまいの方はある程度視聴率も取れたらしいんで、スタッフとしてはやっぱりほっとしましたけどね。

―――カトリをやっていてよかったと思われることは。

 あんまりないんですけど(笑)。仕事をもらえたってことは大変ありがたかったですね。キャラデザは初めてでしたし。やっぱりやらせていただいてよかったですよ。


ACT.3 アニメーター 高野登
―――1話分の作画を上げるのにどのくらいかかりますか。

 10日ぐらいですね。キツイ時になるともう一週間ぐらいしかなかったりして。一週間で6000枚、1日約1000枚近く見るわけですからかなり重労働ですよ。

―――1日大体何時間ぐらいお仕事をなさるのですか。

 そうですね。多いときはまるまる1日。平均約15時間ぐらいですね。だけど割と手が空くんですよ。コンスタントに仕事が入ってくれば、そんなにやらなくてもいいんですけど。空いてて休めればいいんだけど休めないからね。一応会社の社長ですから。やっぱり責任者がいないといけないですし。うちの会社は動画をとってるんであちこち電話して注文とらなきゃいけないんですよ。社員を手空きにしちゃマズイですから。それに上がったものを見なくちゃいけないし。だから休みがないんですよ。とにかくツライですよね、休みがないっていうのは。

―――レイアウトシステムについてですが、専属のレイアウトマンがやるのと、原画マンが各自でやるのとではどちらがやり易いですか。

 うーん自分でレイアウトを描いた方が楽は楽なんですけど、描く人によってラフ画になり易いですよね。レイアウトマンがいればいた方がいいですよ。やっぱりメインスタッフで集中的に管理した方が、作品としてはいいですからね。今はそういうわけにもいかないんです。レイアウトそんなに早く描ける人もいないし。

―――スケジュール的にもレイアウトマンは無理なんでしょうね。

 あとギャラですね。恐ろしく安いですからね。こんな安いギャラじゃレイアウトやるのバカらしいってことになっちゃうんでしょう。
 レイアウトってある程度動きを知っていないと描けないですからね。アクションものならバ――ッと1枚キメの絵を描けばいいんだけど、名作ものは細かいでしょう芝居が。どっから皿を出すとか、どこへ皿を置くとか、すごく細かいんですよ。とにかくカット内で1アクションじゃないんです。だからちゃんと細かいところまで設定してないと、つじつまがあわなくなっちゃうんですよね。

―――いわゆるメカものなんかだとレイアウトっていうのは背景原図になっているんですよね。キャラはマルチョンとか。その中で名作もののレイアウトって、いつも描きこみがスゴイですね。

 宮崎さんが最初にああいう方式作っちゃったからね。でもあれがいいと思うんですよ。やっぱりアニメーターが絵に関して主導権を取った方がね。だからうちの会社もこの方式でやってるんですよ。ミームでもバッチリレイアウトを描かせると。結局は本人のためになるんです。パースもきちんと合うようになってくるし。後で上に行った時にね、ストーリーボードなんかホイホイ描けるようになるには、最初のうちから訓練しておかないと意外と描けないもんなんですよ。

―――レイアウトを描くっていうことは、美術や設定等が全部頭に入っていないとできないということですね。

 そうですね、だから大変ですよ。結構レイアウトを描くところはありますけど、東映なんかそうでもなかったですね。僕がキャンディのレイアウト描いてたら、そんなに描かなくていいって、あたりだけ描いときゃいいって。だけどいやだからって描いたんですけど。東映は恐ろしく大ざっぱって気がしましたね、日アと比べて。

―――名作ものはそれだけ丁寧に作られてるということでもあるんでしょうけど。

 やっぱり他とちょっと違いますね。

―――スタジオTOTOについて少しお伺いしたいのですが。

 TOTOっていうのは、ホルスに出てきたフクロウからとってるんです。短く覚え易いってことで。あと音楽のグループからっていうのもあるんですけど。
 うちは合作とか中高生向きのはやらないですね。最初はやっぱり名作ものを作ろうと思って会社作ったんですけどね。

―――これからやってみたい作品などは。

 藤子不二雄さんのをやりたいですね。そりゃ会社として、仕事としていいということなんですけど(笑)。OHプロでね、ルーシーやってた頃ギャグものがやりたかったんです。でもOHプロじゃやらせてくれないんですよ。怪物くんとかね、人がやってるの見ると面白そうなんですよね。で、怪物くんやりたいなあって。

―――この間ハットリくんをなさってましたね。

 そう、カトリ終わった後ハットリくんを手始めにやったんです。もうずっと前からやろうと思ってたんですよ。藤子さんの作品は好きですからね。

―――ミームについてはどうですか。

 ミームはやってて楽しいですね。面白いですよ、とても。何かルパンみたいな感じがあって。ハットリくんもそうですけど、遊べたりして楽しんでやってますね。

―――名作ものなどは。

 来年はやりたいなと思ってるんですけど、わかんないですけどね……来年やりたいですね。

―――名作ものは大変でも惹かれるところがあるということですか?

 うーん、10年やりましたからね。他の人にも言ったことがあるんですが、全うしたいですよ(笑)。面白いですしね。一年間かけてああいうのをやるというのは他にないですしね。

―――キャラクターデザインはまたやってみたいですか。

 いろいろありますからねえ、ただ単にやってみたいというわけにはいかないんですよ。会社もってるとなかなかそう自由にはね。まず会社やってくというのが第一ですから。でもまあキャラデザの仕事はくればもちろんやりたいですよね、誰でもそうだと思いますけど。

―――アニメーターになろうと思っている若い人達については。

 うーん、やめた方がいいですよ(笑)。やっぱりヤクザな道ですから。僕はアニメーターとして作監やキャラデザもやって一応会社ももってますけど、それでも給料は随分安いですよ。中にはそりゃたくさん儲けてる人もいますけどね。例えば市役所の人なんか平社員でもブルーバードとかのってますからね。僕らなんか免許持ってますけど、250のバイクの中古に乗ってるという。この差はやっぱり(笑)。

―――今後の御予定は?

 特にないんですけど、ミームは当分やりますね。うちの原画マン、好きなんですよミームが。どっちかって言うとミームは、会社の若い人達が主体となってやってるんです。その人達がミームをやりたいっていうんなら、ほとんどそちらにかかると思います。だんだん僕が会社の中心じゃなくなってきたから(笑)。
 ミームでもほとんど主要な部分ていうのはそういう人達が描いているんですよ。
 だから会社としては、そういった人達が中心に動いて行くと。
 個人的には、やっぱりまず会社ですよね。会社がちゃんと動いていかなくては。それからですよね、何でも。
 でも、やっぱり名作もので何かちゃんとしたいいものを作ってみたいな「って思ってるんですけど。

―――本日はお忙しいところを本当に有り難うございました。

アニメーター平川哲生氏が監督デビュー

演出志望であるにもかかわらずなかなか演出業に手を出さなかった平川さんですがなんと…。

http://netstar.moe-nifty.com/blog/2009/05/post-ee45.html

監督はこの作品がデビューとなる
平川哲生さんです。
河童のクゥと夏休み」などで知られる原恵一さんにも
協力をしていただきながら、
素晴らしい演出をしてくださいました。
背景は、「時をかける少女」「天空の城ラピュタ」などの美術で
知られる、山本二三さんに手がけていただきました。
テレビアニメとは思えないほどのクオリティに仕上がっています。

いきなり初監督だそうです。おめでとうございます。

川の光
6月20日(土)午後7時30分からNHK総合テレビで放送予定

チャイナさんの縮小 The Spirit of Wonder vol.1





藤森さん演出・作監の「チャイナさんの縮小」、前回の「チャイナさんの憂鬱」から10年近く経過しており藤森さんのコメディタッチな画風も確立、「少年科学倶楽部」のおまけ的な作品ということもあって遊び心の多い楽しい作画になっています。全編に渡って藤森タッチが行き届いているので、氏の煙や水のエフェクト表現を研究するにはぴったりの一作かもしれません。見所はアクションを得意とする藤森さん自らの原画と思われるネズミとの格闘シーン。重心を落とした見事な体捌きの表現と忍たまチックなギャグ顔がたまりません。最後のチャイナさんが元の大きさに戻ってから巨大化するまでのカットは人物がまるっこく玄人的上手さを感じる作画で、原画のクレジット順から言っておそらく船越さんなのではないかと思います。


[絵コンテ・作画監督] 藤森雅也
[演出] 根岸宏樹
[原画] 木村文代、川口博史、中村裕之、千葉ゆみ、加納みずほ、大杉宣弘
     津幡佳明、中村久文、佐藤卓志、浅井義之、関根昌之、船越英之


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チャイナさんの憂鬱 The Spirit of Wonder





鶴田謙二の絵がそのまま動くという奇跡的なOVA。キャラクターデザインに柳田義明、原画に西村博之、海谷敏久、藤森雅也、江口摩吏介、藤川太など。
'92年当時亜細亜堂といえば「サミアどん」などの芝山さんのイメージか「ちびまる子ちゃん」などのまるっこい作画といったイメージしかなく(忍たまは'93から)、正直なところなぜガイナックスではなく亜細亜堂?と思ったのですが、蓋を開けてみると想像以上の鶴田作画に驚かされたのでした。
[監督] 本郷みつる
[キャラクターデザイン・作画監督] 柳田義明
[設定] 西村博之、海谷敏久
[原画] 西村博之、海谷敏久、柴田晃宏、藤森雅也、江口摩吏介
     村田充範、高倉佳彦、斎藤哲人、吉野高夫、藤川太、大原泰志
     協力 めがてんスタジオ*1


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*1:めがてんスタジオは本郷みつる西村博之所属のスタジオで二人とも亜細亜堂出身

#3 前略タモツ殿!東京は美女ばかりだぜ・・・


前半若干作画にばらつきを感じますが後半のタモツと母との会話シーンが年季を感じるいい作画です。


[絵コンテ・演出] 澤井幸次
[作画監督] 中嶋敦子
[原画] 阿部卓司、本山浩司、奥田万里、遠藤麻未、宮下力


F-エフ- DVD-BOX

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[rakuten:neowing-r:10016219:detail]

#2 サイテー男の決意 オラ東京サ行くだ!


上段:服の皺のリアル寄りな処理にジャイアンツらしさが。かっちりした絵作りが魅力
下段中:音無竜之介さんはめぞんの後半になるにしたがって少しゆうきまさみが入ってくるんですよね。特に半笑いの表情


前番組がめぞん一刻でFもディーン制作のため、ジャイアンツもめぞんに引き続き作画ローテに入っています。めぞん一刻で確かな評価を得た音無竜之介の、まるみがあってきっちりとしたラインの良作画。


[絵コンテ・演出] 谷田部勝義
[作画監督] 音無竜之介
[原画] スタジオジャイアン
     鈴木俊二、菜明、八塚ひろし、椎名真知夫

#1 俺は世界最速!!なんびとも俺の前を走らせねェ


上段左:いきなり前田さんカットで嬉しい
中段左:貞本さんの描く女の子が団子ッ鼻のリアル路線からマンガチックな可愛いキャラに変化しつつある過程がここに。このあとナディア
中段右:難しいアングルを見事なパースで描かれています
下段中:最近こういう表現なくなりましたね


冒頭トラクターとポルシェの農道カーチェイスが貞本・前田作画。Fがアニメ化と聞いて飛んできたのでしょうか。このあと#6でも原画を担当していますがその後はナディアの製作が始まったためかこの2話のみの参加となっています。おそらくイレギュラー的な参加だと思いますがその甲斐あって暴走シーンは見ごたえ充分、トラクターの立体の捕らえ方はさすが貞本さんといった感じです。
キャラクターデザイン・作画監督の工藤さんはタツノコ出身(確認とってないけどそうだよね?)だけあってジリオンの頃の後藤さんに近い感じ。このあとロビンフッドの大冒険でキャラデを担当されています。


[絵コンテ] 真下耕一
[演出] 石山貴明
[作画監督] 工藤柾輝
[原画] 河南正昭、富田悦子、千葉順三、貞本義行
     前田真宏、福田圭祐、鎌田春生